さまざまな人がつなぐ安心の輪
夜間・休日往診を提供する各事業者は質の高い往診を提供するため、広範な地域におけるネットワーク構築や診療機器の拡充、技術・コミュニケーションの向上に日々取り組んでいます。救急往診を支えているのは医師だけではありません。看護師、薬剤師などの医療従事者、医療を適正に届けるオペレーターやドライバーといったスタッフなど、それぞれ重要な役割を担い、要請があれば迅速に、安全に駆けつけられるよう備えています。すべては不安な気持ちの患者さんや家族に、「往診」という安心を届けるために。
医師
診察、薬の処方、ケガの縫合などの外科処置を行います。重症度を見極めるためにポータブルレントゲンやエコー、心電計などの機器を用いた検査を行うことも。問診した病状に応じ、しっかり対応できる医師や専門医師が往診に向かいます。
看護師
医師に同行、もしくは医師の要請を受けて単独で患者さんの自宅に出向き、バイタルチェックや採血、点滴などの処置を行います。また、往診翌日に患者さんと連絡を取り、経過を確認するフォローアップも役割の一つです。
薬剤師
解熱鎮痛剤、降圧剤、小児用の粉薬などの多種多様な処方薬、診察道具から必要なものを一つ一つピックアップし、往診セットを作るのが薬剤師の役割。医師が適切な治療を提供する上で欠かせない存在です。
オペレーター
救急要請に最も早く対応。患者さんからヒアリングした病状だけでなく、電話越しに伝わってくる「息苦しそう」といった状態・状況をも的確に把握し、医師へとつなぎます。
ドライバー
薬剤師チームが作った往診セットを車に積み込み、医師とペアになって往診先に向かいます。医師を安全に、確実に患者さん宅へと送り、診察中は近隣住民の迷惑にならないよう待機しています。
往診に携わる医師に聞いた
すべての患者さんが適切な医療につながり
人々の幸せが守られる社会の実現に向けて
高齢化や世帯構造の変化によって、孤立する高齢者が増えています。高齢者の救急搬送の実に4割が軽症とされていますが、身近に頼れる人がいなければ軽症でも救急車を呼ぶしかありません。つまり、高齢者の「受診のしづらさ」が、救急病院の負担の原因にもなっているのです。
そこで私たちは医療相談を兼ねた事前のトリアージ、往診翌日の患者さんへの電話連絡によるフォローなど、社会が求めるきめ細かな往診の形を実現してきました。また、かかりつけ医との連携にも力を入れ、往診前後の密な情報共有によって、日中と、夜間・休日のそれぞれで分担して患者さんのことを見守る体制を築いています。さらに、介護が必要な患者さんがいれば地域のケアマネジャーにつなぐ。こうしたことも、救急医療の担い手として重要な役割と考えています。
何かあればとにかく救急車を呼ぶ、という時代は終わりました。皆さん一人ひとりが普段からかかりつけ医としっかりコミュニケーションを取り、救急時の対応について相談しておくことで、本当に救急病院が必要な重症者のためにその場を利用できるようになります。自分が意識することがみんなの幸せになる。このことを、ぜひ心に留めていただきたいと思います。
菊池 亮
2010年帝京大学医学部卒業。帝京大学医学部附属病院、関連病院にて整形外科・救急医療の現場に携わる。その経験をもとに適切な救急車・救急医療の利用を促進し、日本の医療全体の持続可能性を高めることを目的に、ファストドクター株式会社を創業。
2016年に代表取締役に就任。